資産一億円への道 diary

資産一億円達成のための道しるべ

自社株買いの研究

自社株買いの発表があると殆どの場合、株価は上昇する。

理由は、自社株買いをするとEPS(1株当り利益)が上昇するのでは、という期待と1株当りの配当が増える可能性が高いからだ(※1)。

 

これは投資家サイドからの見方だが、会社側からはどのような理由で自社株買いをするのだろうか? 以下、理論的背景を分析してみたい。以下は日米の学者の中佐、研究から統計的に有意な結果が出た研究の要約です。

 

※1: 自社株買いをした株式は通常は「金庫株」として会社側が保管するか、消却して発行済株数を減らす。「金庫株」を後日、再度投資家に売り出す、という事は滅多に無いが他社を買収する際に買収対価を「金庫株」で支払う事は良くある。
EPSは、(最終利益)÷(発行済株数) で計算され、この発行済株数は「金庫株」も含まれる。従い、厳密には自社株買いイコールEPSの上昇とはならないが、自社株買い実施後、時間差を置いて金庫株の消却が行われる事も多いので、EPS上昇期待はある程度合理的根拠はある。また「金庫株」には配当を支払わなくても良いので、配当性向(配当総額÷最終利益)が自社株買い前後で変更されなければ、株主への配当額は増える。配当重視の投資家は、これを歓迎するので、株価上昇の要因になる。

 

 ★企業サイドから見た自社株買いの理由

 1.  EPS値を上げる
日米ともにファイナンスの学者が様々な研究を行っているが、自社株買いについても研究している。調査の結果は、76%の米国企業が自社株買いの理由を 「EPS値を上げること」と答えている。日本でも59%の企業が同様の回答をしている。
つまり経営陣はEPSの値を強く意識して自社株買いを行っている。
その背景だが、

  • 従業員のストックオプション行使によるEPSの希薄化を緩和する。
  • 経営陣に対する業績連動型報酬の指標にEPSが採用されている場合、当期EPSが前記EPSを僅かに下回っているときに自社株買いは起きやすい。
  • 自社株買いを行わなければアナリスト予想EPSを達成できない場合、企業は積極的に自社株買いを行う。特に現状のEPSがアナリスト予想のEPSを少しだけ下回っている場合には、自社株買いの実施確率が急増する。逆に自社株買い前のEPSがアナリスト予想のEPSを上回っているときは自社株買い実施確率は低くなる。
  • EPSの対前期比成長率が今期は維持できそうにない時に、自社株買いは増加する。

 

2. 将来の好収益性を伝えるシグナル

  • 企業の将来収益の見通しに関しては経営陣のほうが投資家より詳しい。将来の収益が高いことを確信する経営陣は、株価の過小評価に直面した際、自社株買いを行い、将来の好収益性を投資家に伝える。
  • このシグナル理論では、今まで反映されていなかった「業績は投資家の皆さんの予想よりももっと良くなる」という新たな情報が株価に反映されることにより、株価は上昇する。
  • 研究によれば、シグナル理論が当てはまる場合、自社株買いのアナウンスから1年から3年後にかけてEPSは実際に有意に上昇することが確認されている。
  • 自社株買いアナウンス前の株価の下落が大きければ大きいほど、自社株買いアナウンスメント効果は大きい。
  • ボラティリティ指数が上昇しているときには株価は下落していることが多いので、この時期に積極的に自社株買いを公表する企業は多い。

 

3. フリーキャッシュフロー理論

  • 自社株買いの説明に「フリーキャッシュフロー理論」がある。これは企業が過剰なフリーキャッシュフローを溜め込むと、経営陣は非効率な資金の使い方をし、企業価値を低くする行動に出る、というものでフリーキャッシュフローを増配、自社株買い等により株主に還元し、資金効率を高めるべきというもの。
  • 特にフリーキャッシュフローが多く、売上高成長率が低い企業での自社株買いは株価上昇効果が大きい事が指摘されている。

 

4. 敵対的買収を回避する

  • 自社株買いは敵対的買収のターゲットとなる事を回避する効果がある。自社株買いの結果、自社の株価に不満を持つ株主から株式を買い取る事で、買収されるのを困難にすることが出来る。

 

5. 経営指標の下方修正インパクトを和らげる

  • 経営陣が目標とする経営指標が下方修正される際のネガティブ・サプライズを回避する目的で自社株買いを行う場合も存在する。

 

6. 同業他社への対抗策

  • ある会社が自社株買いを宣言すると、同業他社の株価は相対的に下落する傾向がある。なので、それら同業他社も対抗上、自社株買いを打ち出す傾向がある

 

7. バランスシートの調整

  • 経営陣は自社の負債比率が理想と考える水準より低い場合、配当よりも自社株買いを積極的に行う。