★カリコー・カタリン女史
新型コロナで一躍脚光を浴びた「ノーベル賞級の研究成果」と称賛されるmRNA(メッセンジャー・RNA)だが、開発の主役はカリコー・カタリンというハンガリー出身の化学者だ。ハンガリーは歴史的に、コンピュータの父といわれるフォン・ノイマン、著名投資家のジョージ・ソロス、インテル創業者のアンディ・グローブといった数々の天才を生み出している。
カリコー女史(ハンガリーは欧州で唯一、日本と同じく姓・名の順で名前を記すので、カリコーが苗字)の略歴は
を見て頂くとして、このmRNAを使えば画期的な医薬が創れるのは、研究者の間ではある程度認識されていたが、このmRNAを人体に投与すると「免疫反応により重篤な炎症を引き起こす」という欠点もあった。
この欠点をカリコー女史は2005年に共同研究者のドリュー・ワイスマン博士と「修飾ヌクレオシド」を使い免疫反応を抑制する方法を開発、特許取得にこぎつけた。当初は「ウィルスの遺伝物質を使用して人体に特定のタンパク質を複製しウイルスと闘えと指令する」方法は「過激なギャンブル」として医学界でも危険視され、研究開発のための助成金申請などは尽く却下されていたが、この特許を評価したのが、米国のモデルナとドイツのバイオンテック。
ファイザーがバイオンテックに潤沢な資金を注ぎ込んでいたので、女史は研究資金の安定さを見込んで、バイオンテックに移籍する事を選び、今はそこの上級副社長として研究を続けている。おおまかなmRNAの作用は以下の通り。
一部のメディアから女史に対して「人類の危機に乗じて大儲けするのは如何なものか?」という意地悪い質問も寄せられたが、「ファイザーは米国政府からの資金援助は一切受け取らず、20億ドルもの大金をバイオンテックに注ぎ込んできた。mRNAが失敗したら株主訴訟を起こされる可能性も十分あった。そのようなリスクと多大なる投入資金、努力に比べたらワクチン価格が高いとは思わない」とサラッとかわしている。開発者の発言は説得力がある。
そのモデルナ、バイオンテック(米語読みではビオンテック)だが、両社とも米国で上場、取引されている。
★モデルナ
tickerはMRNA。 モデルナは創薬ベンチャーの例に漏れず赤字続きだったが、ここへきて黒字に浮上し、営業CFもプラスに転じた。
モデルナ 週足チャート(2021年6月20日の週まで)
★バイオンテック
tickerはBNTX 同社も赤字続きだったが、ここへきて黒字に浮上し、営業CFもプラスに転じた。
バイオンテックの週足チャート