さる5月1日に日銀短観が公表されたが、日銀のホームページ上でグラフが作成できるので、それをもとに日本の経済状況を少し考察してみた。
★日銀短観とは
日銀短観とは四半期に一度発表される経済統計。我が国の景気の現状や先行きを把握する上で代表的な統計の一つ。
毎年3、6、9、12月にアンケートが実施され、翌月1日に結果が公表される。但し、12月は例外的に15日に公表される。(土日、祝日の都合により若干異なる日付になることがある)
調査対象は全国の資本金2,000万円以上の金融機関を除く企業1万社。
企業規模は資本金の額で「大企業」「中企業」「小企業」の3つに区分しており、
大企業は資本金10億円以上
中企業は資本金1億円以上10億円未満
小企業は資本金2,000億円以上1億円未満
としている。
※株式投資の参考として利用するなら、大企業のデータを中心に見ていけば良い。
★調査手法
アンケート手法。回答率はほぼ99パーセントで企業側の回答から結果の公表までは半月くらいで、情報の鮮度が高い。
★特徴
業況判断DIの変化の継続的な動きは景気変動とほぼ同じ動きを示す。
業種別に現在、先行きの景況感を長期のトレンドを交えて見ることができる
★DIとは
DI(Diffusion Index) の計算式は
業況判断の各項目で「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。回答の選択肢は
「良い」
「さほど良くない」
「悪い」の3つ。
例えば、「良い」が40パーセント、「さほど良くない」が40パーセント、「悪い」が20パーセントなら、DIは
40マイナス20でプラス20となる。
★現状判断
下は大企業・製造業の現状判断だが、シャドー部分は内閣府の判断による景気後退期。赤い棒グラフは前回調査時の業況判断との差。ここがプラス領域なら、前回よりも現状は良くなっている、マイナス領域ならその逆。
図を見て分かるように、この赤の棒グラフが連続してマイナス領域にあるときは景気後退期が近いことを示している。
2019年10月は、消費増税のタイミングとしては良くなかった事を示している。
下図は大企業・非製造業の現状判断グラフ。
非製造業の場合、業績に対して輸出入や為替の影響は比較的受けにくいので、製造業よりは数値が遅れて反応する傾向がある。また業種ごとの景況感に格差があるのが特徴で、全体だけを見ると判断を誤りやすい。
★先行き見通し
下図は大企業・製造業の先行き判断グラフ。
紫の棒グラフは前回調査時との格差。2018年以来、先行きの見通しはかなり悲観的なのが分かる。
下図は大企業・非製造業の先行き判断グラフ。
今回の新型コロナ問題では非製造業のショックの方が製造業よりも大きい。
★雇用
雇用の先行きは、政府も日銀も重視している項目だが、製造業では2013年、非製造業では2011年以降採用難に陥っていることがわかる(グラフのマイナス領域)
今回の新型コロナウィルス問題で、あちこちで倒産、自主廃業に伴う解雇の問題が話題になっているが、労働力不足はこのグラフを見る限り深刻で、有効な治療法やワクチンが開発されれば、職種にもよるが、意外と早く新たな仕事を見つけられる人も多いのではないか、と推測される。