賃金水準から見た投資のチャンスの有無
★時給でみるとニュー・ヨークは東京の1.5倍
米国ニューヨーク市内で従業員数が11名以上の企業の最低時給は15ドル。
東京では職種にもよるが一般的なコンビニ、食堂では千円前後というところだろう。
日本の賃金は異様に安い。
背景をちょっと考えてみたい。
★1人当たり名目GDP は日本は23位。シンガポール、香港よりも下位
アジア他国ではシンガポール8位、香港15位。2020年の世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング(IMF調査)を見ると日本は23位。アジア他国ではシンガポール8位、香港15位。
★日本の平均年間労働賃金は韓国より低い
OECDの年間平均賃金統計によると、日本の平均年間労働賃金は38,617ドルであり、これはOECD諸国の同平均48,587ドルを大きく下回っている。韓国、イタリア、スペインを下回る水準にあり、36カ国中25位。
下のグラフで
緑は米国で6万5千八百ドル。
赤は韓国で4万2千3百ドル。
青はイタリアで3万9千2百ドル。
紫はスペインで3万8千八百ドル、
黄色は日本で3万8千6百ドル
ちなみにトップはルクセンブルグで6万8千7百ドル
★日本の予想成長率は先進国中最低。
今後の経済成長見通しについては4月にIMFが予想値を出した。
上記の一覧を見て分かる通り、日本の予想成長率は2021年は3.3%、2022年は2.5%の成長見通しで先進国中最低。
★日本は世界第三位の経済大国のはずだが。。。
これ、何故かと考えるに1人当たりGDPが低いなら、平均賃金も低くて当然で、さらに予想経済成長率が他国より低ければ、さらに平均賃金も他国に追い抜かれるのは当然。
しかし、待てよ、日本は世界第三位の経済大国ではなかったのか??? なんか、これおかしい! とこのような統計が出てくる背景を色々と考えてみた。
★日本企業は儲かっていないのが原因か?
仮説だが、理由と思しき一つは、日本企業はきちんとした利益を上げていないのではないか?ということ。
例えば日本のコマツ(6301)と比較されるアメリカ企業はキャタピラー。両社の利益率を並べてみるとROEはコマツの過去10年間平均で12.56%。キャタピラーは26.86%。
ROEではキャタピラーの数値が断然良く、遥かに儲かっている。コマツとキャタピラー、どちらを投資候補とするかと問われたら断然キャタピラーとなる。
次に富士通(6702)とIBMを比べてみよう。富士通は準拠する会計制度をIFRSに変えた2016年3月期以降で平均ROEは12.81%、対してIBMはぼ同じ時期の過去6会計期でROEは55.67%だ。IBMは富士通の4倍以上儲けていることになる。
当たり前の事だが、儲かっている企業の方がより多額の給与を支払うことが可能だ。
★労働分配率も日本は低位
もう一つ、労働分配率はどうであろうか? 労働分配率は企業の儲けに対し、従業員にどれだけ支払ったか、で計算されるが、この場合「儲け」は売上高から売上にかかった原価(売上原価)を引いた値、つまり「粗利益」を指す。
主要国の中で日本の労働分配率は確かに低い。直近の実績値は2017年のものだが、日本の48.6に対しアメリカは52.4。 4ポイント近くも差がついている。
つまり、日本企業は相対的に儲かっていないので賃金が伸びず、さらに労働分配率も低いので、その面でも賃金が低水準で留まっている、ということになる。
そこで、逆説的に「高い賃金を支払っている会社は、それだけのものを支払う余裕のある儲かっている企業ではないか?」という説を検証してみたい。以下は東洋経済2020年11月21日掲載の『生涯給料「全国トップ500社」ランキング』からトップ30社。
ここから先は、話が長くなるので、今回はここまで。