M&Aに見る企業の商品、顧客ポートフォリオについての考察(1)
ニトリと島忠
島忠(8184)はニトリ(9843)に買収され、2021年3月24日に上場廃止となった。このM&A案件に付き両社の顧客ポートフォリオ、商品ポートフォリオ、ニトリの戦略上のこのM&Aの位置づけについて考察してみたい。
★ニトリにとってのメリット
両社では顧客、立地、提供商品の価格区分が異なり補完する関係があるのでメリットが生まれる。大まかには以下の通り。
ニトリ | 島忠 | |
---|---|---|
家具価格帯 | 低価格~中上価格 | 中上~高級 |
お客さん | 2/3が女性 | 2/3が男性 |
店舗の立地 | 店舗は郊外中心 | 一等地に店舗を保有 |
店舗の規模 | 小規模店が多い | 大規模店が多い |
★ニトリは衣食住の総合カンパニーを目指している
ニトリは一般的には家具を扱っていると思われているが「衣食住のすべてを手掛ける会社」を目指している。
ニトリの家具の売上は全体の約37%、残りは家内装飾品といわれるホーム・ファッション。カーペット、敷物、カーテン、寝装具、キッチン用品等でこれらをコーディネートする提案力が売り。「一に値段の安さ、二に品質の良さ、三にコーディネート力」とニトリ会長も言っている。
衣に関してはN+で40から60代の女性向けファッション提案を、おシャレだがデパートほどには値が張らない価格帯で提供することを目的として設立。
食に関しては以前フランチャイズとして「いきなりステーキ」を手掛けていた関係でそのノウハウを一部入れて「ニトリダイニング」を展開を行い、住に関しては、カチタス(8919)に33.96%出資の筆頭株主になっており「衣食住の総合カンパニー」への布石を着々と打ってきている。
これはヤマダ電機を主体とするヤマダホールディング(9831)と似たような戦略だ。ヤマダホールディングは旧エスバイエル、大塚家具を傘下に入れ、家電量販店から総合ホームメーカーに脱皮しようとしているように見える。ちなみにエスバイエルは昔は小堀住建と言っていて、ご先祖様は江戸時代初期の有名な大名茶人であり作庭家として知られる小堀遠州の流れを汲んでいる。
★成長力、収益力も申し分ない
そのニトリのバリュエーションだが、ROE、営業利益率、売上高伸び率が全て10%を上回っている。
配当利回りは0.8%未満で低いが過去10年、連続増配を続けている。
島忠買収で約2100億円を使い、フリーキャッシュフローが大幅に減少したので、当面は買収効果をしっかりと投資家に示すため、足元を引き締めてビジネスに望むのではないか、と思われる。
株価だが、過去3年の安値圏に入ってきた。その間の平均PERからみても今の予想PERは低くなっている。どこかのタイミングで参入したいが、ネックは単位株を購入するのに今の状態では180万円くらい必要ということ。世界の株価市場が不安定さを増しているので、もう少し様子見をしたいところかな~