2021年3月25日の主要ニュースから
★化石燃料に頼る日本の問題点
日本は東日本大震災で東電の原子力発電所が甚大な被害を被り、原子力発電への拒否感が強い。結果、化石燃料を使用した火力発電の割合が高くなっているのだが、昨今の世界的な温暖化ガス排出削減の流れの中で苦しい立場に追い込まれている。
2018年のデータでは日本の電源構成は
火力 77%(石炭 32%、石油7%、液化天然ガス 38%)
水力 8.4%
原子力 6.1%
再生可能エネルギー 9.6%
欧州はフランスの例で同じく2018年で、
火力 8.1%(石炭 1.8%、石油1%、液化天然ガス 5.3%)
水力 12.1%
原子力 71%
再生可能エネルギー 8.8%
★EUの打ち出した国境炭素税案
ここで、EUが2019年末に2050年目標で温暖化ガスの排出をゼロにするため、温暖化排出量の多い国からの輸入品に課税する「国境炭素税」という構想を打ち出した。
この「国境炭素税」は、製品のライフサイクル、つまり部品、パーツの製造段階まで遡って税を課す、というもの。
例えば、太陽光発電パネルそのものは太陽光から電気を作るので温暖化ガスを排出しないが、その太陽光発電パネルを製造する過程で使用した電力が温暖化ガスを排出する火力発電由来であれば、その使用電力量も課税の対象になる。同じようにパネルの部品製造工程の中で温暖化ガスを排出する部分があれば、それも課税対象となる、というもの。
我が国に対する影響という観点からは、火力発電がメイン(つまり、温暖化ガスを大量に排出する)の日本で製造した商品を輸出する際には圧倒的に不利になる。いまWTOでも侃々諤々の議論になっているようだが、このまま手をこまねいていては、EUに日本国内で生産した製品を輸出すると多額の「国境炭素税」を課され、製品は価格競争力が無くなり、その結果生産工場は海外に流出し、国内の雇用も消失する懸念が大。
当面の対策としては(温暖化ガスを排出しない)原発の再稼働が良いのだろうが、折しも東電の柏崎刈羽原発でのテロ対策不備が露見し、より一層原子力発電への不信感が高まってしまった。
では、太陽光発電などの再生可能エネルギーの割合を増やせば良いか、というとそう問題は簡単ではない。
なぜなら、再生可能エネルギーのほうが圧倒的に発電コストが高いので、電力料金の高騰から製造コストが上昇し、メード・イン・ジャパン製品の価格競争力の低下懸念、工場の海外移転懸念や雇用減懸念が生じる。これはEUから「国境炭素税」を課された場合と同じだが、これに加え一般家庭では電力料金高騰から家計が苦しくなるなどの問題も生じる。
簡単には答えの出ない問題だ。