教育水準と貧困には関連があると昔からいわれています。
ではどのような時期にどのような教育を施せば、自分の子供や孫が貧困層に転落せず、経済的に成功できるのでしょうか。
2000年にノーベル経済学賞を取ったシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授は、就学前つまり小学校に入学する前の教育が決定的に大事な役割を果たしていることを発見しました。
アメリカではマイノリティの経済的貧困が社会問題となって
いますが、なぜ所得格差が起こるかを分析すると、「学歴の違
い」が大きな要因として浮かび上がってきます。そこでアメ
リカでは、マイノリティの大学進学率を高めるために、過去
にさまざまな補助政策が行われてきましたが、教育投資効果
は低いという結果が出ています。では大学段階で教育投資を
するのが遅いのなら、高校段階や小・中学校段階ではどうかと研究対象を遡っていくと、いずれの段階でも十分な効果は表れていないということが明らかになってきました。
つまり、小学校からでも遅いということなのですね。
ではいつからが良いのでしょうか。
所得階層別の学力差はすでに6歳の就学時点からついています。
この段階でついた学力差は、後の経済格差にも直結します。そ
してこの差は、就学後に低所得の家庭の子どもを対象にさまざ
まな教育投資を行っても、容易に縮まることはないのです。
へックマン教授は小学校入学前の教育が大事だといっています。
ヘッグマン教授は、「就学後の教育
の効率性を決めるのは、就学前の教育にある」とする論文を、
科学雑誌『Science』で発表しました。彼はまた「恵まれな
い家庭に育ってきた子どもたちの経済状態や生活の質を高め
るには、幼少期の教育が重要である」と主張しています。
ここでヘックマン教授は、IQに代表される認知能力と、学習意欲、努力、忍耐などの非認知能力の内、就学前の教育では非認知能力が育まれる、と言っています。
就学前教育を受けた子どもたちの間で顕著だったのは、学
習意欲の伸びでした。一方で子どもたちのIQを高める効果
は、小さいことが明らかになっています。高所得を得たり、
社会的に成功したりするには、IQなどの認知能力と、学習意
欲や労働意欲、努力や忍耐などの非認知能力の両方が必要に
なるわけですが、ペリー就学前計画は、子どもたちの非認知
能力を高めることに貢献したわけです。
日本では、大学教育無償化などを政策綱領に掲げている政党もありますが、この研究をみると、かなり的外れなような気がします。
以上、ベネッセ教育総合研究所の記事に基いた考察でした。
http://berd.benesse.jp/berd/center/open/berd/2009/03/pdf/16berd_07.pdf